エッジイノベーションが Fastly Labs に与えた影響
この度、開発者コミュニティ全体に開かれた、進行中のプロジェクトや実験的なアイデアのハブである Fastly Labs を発表することができ、うれしく思います。これらのプロジェクトでは、初期段階から Fastly の研究と開発を共有しているので、その成果を活用し、フィードバックを共有することができます。また、Fastly の革新性や今後の方向性を直接知ることができます。Fastly Labs は、Fastly の価値観に不可欠なコミュニティとの信頼と透明性の精神を体現しており、これを皆さんと共有できることを大変喜ばしく思います。
また、Fastly Labs は、社内チームのために、クリエイティブなアイデアを開花させ、開発者が自由で安全に実験できる特別な空間を提供しています。Fastly が常に最優先に考えるのは、プラットフォームにおける信頼性と安全性であり、Fastly Labs は、ユーザーが信頼を寄せているネットワークを乱すことはありません。つまり、安全に開発できるだけでなく、コミュニティに迅速に対応することができます。
各プロジェクトを詳しく説明する前に、Fastly Labs が発展してきた経過を紹介したいと思います。これは、さまざまな意味において、Fastly が創業以来取り組んできたことの延長線上にあります。そして Fastly Labs の最も興味深い点は、これが私たちの今後の方向性も示していることでしょう。
Fastly の原点を振り返る
私たちが Fastly の開発を始めたのは7年以上も前ですが、当初から確信していることがありました。たとえば、インターネットが今後さらに進化するということ。そして、透明性、信頼性、目的意識のある会社を設立するべきだということ。自分たちのプロダクトと、それを利用するお客様を第一に考えるということ。当時からこうした点を明確に意識していました。しかし同時に、未知数な部分も多々あったのです。
当時、CEO の Artur と市場のギャップや技術の方向性について話したことを覚えています。私たちは、従来のコンテンツ配信ネットワーク (CDN) を超えるビジネスチャンスを見出し、エッジ・コンピューティング・ネットワークというアイデアについて議論し、データやアプリケーションをできるだけエンドユーザーの近くに戦略的に移動させることを目指しました。しかし、当時はその展開方法や活用方法は、正確にはわかりませんでした。その時点では、まだアイデアの種に過ぎなかったのです。
私たちがすぐに気づいたのは、静的コンテンツと動的コンテンツの間にあるギャップでした。そこで、Fastly が登場したのです。私たちがイベントドリブン型のコンテンツを採用したのも自然の流れでした。たとえば、ニュースサイトのランディングページを更新する必要がある場合、Fastly はインスタントパージを行い、キャッシュからページを再読み込みし、読者に適切に配信することができました。そのためには、エッジでアプリケーションロジックを書く必要がありました。
インターネットが進化し、「サーバーレス」などのバズワードが登場するとともに、エッジで構築されるアプリケーションロジックが増えつつあります。現在では、初心者の開発者から大規模なインフラチームまで、誰もがその重要性を理解しています。Fastly の創業期の2010年に発表されたエッジコンピューティングに関する論文は150本でしたが、昨年は3,270本に増えたことからも、こうした変化がお分かりいただけるかと思います。
つまり、エッジはこれからの時代を予測する上で、ますます欠かせない要素になっているのです。エッジ・コンピューティング・テクノロジーは (当時はそれが意味するところを十分に理解していなかったとしても) Fastly のバックボーンをこれまで形成しており、その方向性は現在も変わりません。
エッジの定義
「エッジ」という言葉が何を意味しているか、一緒に確認してみましょう。この用語については、それぞれが若干異なる認識を持っているようです。他のテクノロジーと比べると、その定義付けは容易ではありません。モバイルの開発者に尋ねてみた場合、ユーザーが実際に操作するのは携帯電話なので、エッジとはモバイルデバイスそのものと考えるかもしれません。しかし、インターネット・サービス・プロバイダー (ISP) に話を聞くと、エッジはサーバーを設置する最後の場所と考えるでしょう。モバイル通信企業にとっては、サーバーとセルタワーを意味するかもしれません。このように、誰もが独自の視点で「エッジ」とは何かを捉えているのです。
これは重要なポイントです。ネットワークのエッジはひとつに定まっていないため、どの定義も間違いではありません。「エッジ」とは、ネットワークの中でデータのコントロールができなくなるポイントのことです。私たちは当初から、戦略的にデータとアプリケーションをできるだけエンドユーザーの近くに移動させ、パフォーマンス、稼働率、レジリエンスを継続的に向上させ、同時に高速化も図れるように取り組んできました。
継続的なエッジイノベーションの実現
Fastly が時間をかけて開発した機能は、私たちのコミュニティをはじめ、メディア、エンターテイメントから eコマース、ハイテクなど、さまざまな業界の日々変化するビジネスニーズをきっかけに生まれました。エッジ・コンピューティング・テクノロジーにより、エッジでの A/B テストなどが可能になり、反復動作がスピードアップし、オリジンへのトラフィックを抑えることでコスト削減を実現します。また、位置情報を利用したコンテンツターゲティングにより、お客様はユーザーに提供するコンテンツを迅速に調整し、パーソナライズすることができます。このほかにも、最も人気の高いブランドが Fastly の強力なエッジ機能や性能を活用しており、さまざまなユースケースがあります。
これは、私たちが過去7年間推進してきたことです。つまり、エッジコンピューティングを経験するだけでなく、現実的なアプリケーションを構築するための実際のプラットフォームを提供できるようにしました。エッジの未来と、その中での Fastly の位置付け、そして私たちのお客様がすでに活用しているさまざまな機会について考えると、この上なく気持ちが高まります。Fastly の歴史を振り返ると、業界標準に先駆けたエッジのイノベーションだけでなく、透明性、信頼、完全性への継続的な信念が、私たちのストーリーの中心にあるのです。
Fastly Labs を知る
では、Fastly Labs と私たちの未来のビジョンに話を戻しましょう。現在、3つのプロジェクトを立ち上げており、開発者は今すぐにでも利用を開始することができます。
Terrarium
Terrarium を使用すると、開発者は使い慣れた言語でエッジコンピューティングの力を活用できます。多言語対応のブラウザベースのエディター兼デプロイ用プラットフォームであり、エッジで Fastly を強化する次世代テクノロジーを直接試すことができます。
Terrarium は、サーバーレス実装の制限を解消し、イノベーションを妨げたりベンダーロックインを引き起こしたりする言語、API、またはアドオンを使用しなくて済む環境を整備します。開発者は独自のコードを記述して関数やアプリケーションを作成したり、サンプルのいずれかを試し、迅速に (HTTPS 経由で) デプロイすることができます。また、サーバーサイドの WebAssembly サンドボックスをベースにしているため、高速、軽量、かつ安全であり、安心して開発することができます。
Fastly Fiddle
Fiddle を使用することで、開発者は、本番サービスに影響を与えることなく、プラットフォーム上で革新的なアイデアを手早く試すことができます。問題をデバッグしたり、エッジコンピューティング言語を使用してカスタムコードをテストしたりして、すぐに結果を得ることができます (時間のかかるサーバーセットアップの必要はありません)。
URL パスの書き換えから、画像最適化、文字列の検索や置換まで、テストできるソリューションが沢山あります。Fiddle を使えば、Fastly のパワー、柔軟性、スピードを最大限に活用することができます。
Fastly インサイト
インサイトは、すべてのユーザー、そして最も重要であるお客様のエンドユーザーのインターネットエクスペリエンス向上を目指してオプトインできるプログラムです。インサイトを利用することで、Fastly はネットワークパフォーマンスをモニタリングし、指標を収集できるため、目まぐるしく変化するインターネットにおける最適な経路を構築し続けることができます。
もちろん安全な設計で、お客様やエンドユーザーのプライバシーを尊重します。オプトインすることで、Fastly のすべてのお客様のユーザーエクスペリエンスの向上に貢献することができます。また、Fastly は、より優れたコラボレーションを実現し、かつユーザーにとって有益なデータを共有する方法を積極的に検討しています。
まとめ
Fastly Labs のプロジェクトは、Fastly の軌跡と価値観を体現しています。ユーザーは独自のアイデアを試し、何が機能するかを確認し、次のテクノロジーの流れを先導することができます。エッジの未来は非常にスリリングです。私たちは、Fastly のプロダクトに直接影響を与え、透明性と革新の精神を継承する新しい方法を見つけるのに役立つコミュニティがあることを誇りに思います。