ニジェールにおけるモバイルインターネットサービス停止の影響
ニジェールでは、2月21日に大統領選挙の決選投票が行われました。発表された報告によると、この選挙は60年以上前のフランスからの独立以来、ニジェールにとって初の民主的な政権交代への道を開くものとして期待されていました。
しかし、2月23日に国家独立選挙管理委員会によって与党候補の当選が宣言された後、首都ニアメを含む国内各地で暴力的な抗議活動が勃発しました。これを受けてニジェールではモバイルインターネットサービスが停止し、国民の多くがインターネットにアクセスできない状態になりました。残念ながらアフリカ諸国の一部では、政情不安への対応策としてインターネットへのアクセスを制限することが一般的に行われており、スーダンやエチオピア、モーリタニアなどでも、過去に同様の措置が取られた経緯があります。以下では Fastly プラットフォームトラフィックの観点から、ニジェールにおけるインターネットサービス停止が国家、都市、そしてネットワークレベルに及ぼした影響について考察していきます。
ニジェールへの Fastly プラットフォームのトラフィック量 (2021年2月21日 - 3月8日)
上の図は2021年2月21日から3月8日までの、ニジェールへの Fastly プラットフォームのトラフィック量を表しています。選挙後の暴力的な抗議活動は2月23日国内各地で勃発し、翌日にはインターネットへのアクセスの制限が実施されました。このグラフでは、2月24日に始まったサービス停止の影響がトラフィックの山と谷としてはっきりと見られます。サービス停止後のトラフィックは、それ以前に比べて75 %ほど低くなっています。このようなアクセス制限は1週間以上続き、3月5日に通常レベルに回復し始めました。
ニジェールの首都ニアメへの Fastly プラットフォームのトラフィック量 (2021年2月21日 - 3月8日)
報道によると、首都ニアメでは暴動により2人が死亡、400人以上の抗議者が拘留されました。上の図は2021年2月21日から3月8日までの、ニアメへの Fastly プラットフォームのトラフィック量を示しています。10日間に渡るインターネットアクセス停止の間、ニアメへの平均トラフィック量は80 %以上減少しました。
ニジェールへの宛先の ASN を利用した Fastly プラットフォームのトラフィック量 (2021年2月21日 - 3月8日)
トラフィックの大幅な減少は、Airtel Niger や Orange Niger (Zamani Telecom) など、ニジェールのモバイルインターネットプロバイダーにおけるアクセス制限に関連していました。上のグラフから見て取れるように、Fastly がニジェールに配信したトラフィックの大部分は、この2つのネットワークを利用するユーザーによって消費されています。2月24日にこの2社のサービスの大部分がオフラインになった時、トラフィックの一部は他の小規模プロバイダーによって拾われましたが、3月5日にアクセスが回復するまで、ほとんどのユーザーはインターネットから遮断された状態でした。アクセスが停止されていた期間中、Airtel Niger への平均トラフィック量は約75 %、Orange Niger (Zamani Telecom) への平均トラフィック量は約90 %減少しました。
最後に
最近のブログ記事では、新型コロナウィルス感染症の世界的流行によって、インターネットがいかに不可欠になったかについて触れました。しかしこのようなインターネットへの依存は、モバイルや固定回線を問わず、インターネットが常にアクセス可能であることを前提としています。残念ながら、一部の国では政情不安や社会不安などを理由に、インターネットアクセスを停止する行為が行われています。このような行為の影響は上のグラフのように、影響を受けた国やネットワークプロバイダーへの Fastly プラットフォームのトラフィックパターンに現れます。このようなサービス停止が起こらないことを願うばかりですが、万が一発生してしまった場合にはその影響に関するインサイトを提供する予定です。