JWT (JSON Web トークン) は、デジタル署名によって検証された JSON オブジェクトとしてデータを安全に送信するためによく使用されるプロトコルです。JWT は通常、認証や認可、API の保護、シングルサインオン (SSO) 機能の有効化のために実装されます。コンパクトな構造を持ち、暗号検証を使用する JWT は、当事者間の通信を保護する堅牢な方法のひとつです。
JSON (JavaScript Object Notation) は、データを保存および送信するためのオープンで言語に依存しないテキスト形式です。機械が解析・生成しやすく、人間が理解しやすいため、Web アプリケーションや API に最適です。
トークンは、ユーザーの ID と権限を安全かつコンパクトな形式で保存するデジタル認証情報です。これらは現代の認証システムにおいて非常に重要であり、許可されたユーザーのみが保護されたリソースにアクセスできるようにします。
JSON Web トークン (JWT) は、ヘッダー、ペイロード、署名で構成されます。ヘッダーはハッシュアルゴリズムとトークンタイプを指定し、ペイロードには「クレーム」と呼ばれるユーザー情報が含まれ、署名によってトークンの完全性が保証されます。以下では JWT の仕組みを細かく見ていきます。
JWT の作成プロセス : ユーザーがユーザー名とパスワードでログインすると、サーバーは JWT を生成し、関連情報と共にエンコードします。次に、このトークンは改ざんを防ぐために秘密鍵または公開/秘密鍵のペアを使用して署名されます。
トークンの送信 : JWT が作成されると、HTTP ヘッダーまたはレスポンスボディとしてクライアントに送信されます。クライアントは、トークンを HTTP 専用の Cookie またはブラウザのローカルストレージに保存できます。トークンを Cookie として送信したり、後続リクエストの認可ヘッダーに含めたりすることによって、保護されたリソースにアクセスできるようになります。
トークンの検証 : サーバーが JWT を含むリクエストを受信するたびに、トークンをデコードすることからリクエストの処理が開始されます。次に、ペイロードと秘密鍵を使用して署名を再作成し、トークンの真正性を検 証します。サーバーは、クレーム (発行者、対象者、有効期限など) をチェックし、トークンが改ざんされておらず、有効であることを確認します。
ステートレスの性質 : セッションベースの従来の認証とは異なり、JWT を使用する場合、サーバーはユーザーを検証するためにデータベースを照会する必要がありません。必要な情報はすべてトークン内に保持され、秘密鍵を持つあらゆるサーバーがトークンを独立して検証できます。このような JWT のステートレスな性質により、パフォーマンスとスケーラビリティが向上します。
トークンの有効期限 : 通常、ペイロード内で JWT の有効期限が割り当てられます。これにより、侵害されたトークンが使用できる時間枠が制限され、セキュリティがさらに強化されます。検証プロセス中にサーバーはトークンの有効期限を確認し、有効期限が切れている場合はトークンを拒否し、クライアントにトークンの更新を促します。
JWT は、大規模な企業内や紐づけられていないサービス間など、異なるシステム間で情報を交換するアプリケーションにおいて非常に有用です。JWT を使用することで、送信者と受信者が直接関与する必要なく、機密データを安全に交換できるようになります。このような分散型アプローチにより、JWT は高い柔軟性とスケーラビリティを提供し、さまざまなテクノロジー間での通信を可能にします。以下は JWT の主なメリットの一部です。
セキュリティの強化 : JSON Web トークンの署名は秘密鍵を使用して生成されるため、送信中にデータが改ざんされることはありません。
ステートレスな認証 : JWT を使用すると、トークン内で必要な情報すべてがエンコードされ、サーバー側のデータベースが不要になります。その結果、このタイプの認証ではパフォーマンスが向上し、クライアントはシステムを簡単にスケールできるようになります。
クロスドメイン/CORS のサポート : JWT を使用すると、さまざまなドメイン間で安全なデータ交換が可能になるため、CORS (クロスオリジンリソース共有) の実装が容易になります。このような機能は 、サードパーティのサービスをシステムに統合したい場合に役立ちます。
パフォーマンスの向上 : JWT を使用すると、ユーザーを認証する際にサーバーがデータベースをチェックする必要がなくなり、応答時間が短縮され、アプリケーションのパフォーマンスが向上します。
柔軟性 : Web トークンはさまざまなプラットフォームで利用でき、複数のプログラミング言語と互換性があるため、多様なテクノロジースタックや環境と簡単に統合できます。
データの完全性 : トークンの改ざんが試みられると署名が無効になるため、JWT によってデータの完全性と真正性を維持できます。
認証の分散化 : このテクノロジーは、セントラルデータベースに依存せずに複数のサービスにわたる検証を可能にするため、マイクロサービスをサポートし、システムのレジリエンスとスケーラビリティを高めます。
セキュリティや柔軟性の強化などのメリットをもたらす JWT は、さまざまな認証シナリオに最適です。これにより、クライアント側およびサーバー側のアプリケーションは、リクエストごとにデータベースを照会する必要なく、ユーザーを安全に識別し、重要なデータを交換できるようになります。以下は、JSON Web トークンの最も一般的なユースケースの一部です。
シングルサインオン (SSO) : このテクノロジーにより、複数のプラットフォームで認証が簡素化されます。一度認証されると、ユーザーは繰り返しログインする必要なく、さまざまなサービスにアクセスできるため、全体的なユーザーエクスペリエンスが向上します。
API の認証システム : ほとんどの RESTful API は、リクエストを保護するために JWT を使用しています。リクエストヘッダーにトークンを含めることでクライアント認証が効率的に処理され、許可されたユーザーのみが API と対話できるようになります。
情報の交換 : JWT の自己完結性により、トークンは必要なすべての情報を伝達でき、安全な通信が保証されます。
認可 : トークンによってユーザーの役割と権限をエンコードし、アクセスを制御できます。JWT を使用すると、アプリケーションはトークンが提供する情報を使用して認可の決定を下すことができ、リソースへの制御されたアクセスを確保できます。
モバイル認証 : JWT によるステートレス認証は、モバイルアプリケーションに最適です。簡単にトークンを保存して後続の API リクエストに使用できるので、スムーズで応答性の高いユーザーエクスペリエンスを提供できます。
ID のフェデレーション : JWT により、複数のシステムと信頼できるサードパーティ間で安全に ID を共有することが可能になり、さまざまなドメインで迅速なユーザーエクスペリエンスを実現できます。
ユーザーのデータを保護し、認証プロセスの完全性を維持する上で、JWT を安全に実装することが不可欠です。以下に挙げるセキュリティのベストプラクティスに従うことで、リスクを軽減し、コンプライアンス標準を満たし、脅威に対するアプリケーションのレジリエンスを維持できます。
HTTPS を使用して JWT の送信を保護することで、トークンの機密性を維持し、中間者攻撃や傍受から保護できます。
秘密鍵を安全な環境に保存し、環境ごとに異なる鍵を使用します (開発環境や本番環境など)。また、侵害が発生した場合のリスクを最小限に抑えるため、鍵のローテーション戦略を採用します。
トークン内のすべてのクレームを徹底的に検証します。これには、トークンの真正性と有効性を保証するための、有効期限、署名、発行者、対象者の確認が含まれます。
有効期限はセキュリティにとって重要ですが、有効期限を設定する際にはセキュリティとユーザーエクスペリエンスのバランスを取る必要があります。有効期限が短いとセキュリティは向上しますが、頻繁に再認証が必要になるため、ユーザーエクスペリエンスの質が下がります。
JWT のペイロードに機密情報を保存しないでください。トークンの署名により完全性が保証されますが 、傍受された場合、コンテンツが簡単に読み取られてしまうためです。
システム侵害が発生した場合やユーザーがログアウトした際など、必要に応じてトークンを無効化する戦略を作成します。このようなアプローチのひとつに、取り消されたトークンのブラックリストを作成して管理することが挙げられます。
常に強力な暗号化アルゴリズムを使用してトークンに署名します。強力なアルゴリズムは、特にセキュリティが重要な分散システムにおいて、より優れた保護を提供します。
JSON Web トークンは、特に認証および認可のプロセスにおいて、Web セキュリティを確保するために重要です。JWT には大きなメリットがありますが、安全に実行するには堅牢なインフラストラクチャと慎重な計画が必要です。
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