ID プロバイダー (IdP) は、ユーザーの ID 情報を作成、維持、管理しながら、依存関係にあるシステムに認証を提供するサービスです。
IdP のコア機能には以下が含まれます。
認証 : サービスにアクセスする際に、ユーザーが本人であることを確認します。
認可 : 各ユーザーが使用できる特定のシステム、データ、リソースを決定します。
ユーザー管理 : ID プロファイルや個人設定、属性を保存および管理し、スムーズな権限の付与をサポートします。
多くの IdP は、認証データを共有するための SAML、認可のための OAuth、シングルサインオン向けの OpenID Connect など、相互運用性を可能にするオープンスタンダードとプロトコルを使用して構築されています。
一般的な IdP には、Microsoft Azure Active Directory や Okta、Google Identity などがあります。各オプションは、さまざまなアプリケーションやシステムと統合しながら、ユーザー管理と認証情報を一元化します。
ユーザー ID は、デジタルシステムやネットワーク内で個人を識別する固有の属性と認証情報を指します。アカウントにログインする際、3つの主な要素に基づいてユーザーの本人確認が行われます。
ユーザーが知っている情報 : 通常、ユーザーのみが知っているパスワードが使用されます。パスワードは広く使用されていますが、簡単に忘れられたり、推測されたりする可能性があります。
ユーザーが持っている情報 : スマートフォンなど、信頼できるデバイスを所有していることが、さらなる身元の証拠として機能し、知識ベースの認証情報のみに基づくよりも、身元の保証が強化されます。
ユーザー自身の情報 : 指紋などの生体認証の特性は、個人の身体的アイデンティティへの信頼できるリンクを提供します。
各要素によって、保証のレベルが異なります。複数の要素を組み合わせることで、さらに強力な認証が実現します。
ID の管理がますます複雑になる中、パスワードの再利用やデータの隔離によるコンプライアンスのギャップなどの問題が発生する可能性があります。IdP を実装することで ID インフラストラクチャをコントロールできるようになり、セキュリティを強化し、コンプライアンスを簡素化できます。属性と権限が単一の調整されたシステムで処理されるため、ユーザーが組織とやり取りする場所に関係なく、安心してポリシーを適用できます。IdP が一般的な問題の解決にどのように貢献できるか見てみましょう。
パスワード疲れ : パスワードを再利用したり頻繁にリセットしたりするのが面倒なことがあります。IdP によって複数のシステムでシングルサインオン (SSO) が可能になり、冗長な認証情報の必要性を排除できます。
非効率的なユーザー管理 : 個々のディレクトリのプロファイルを最新の状態に保つには、時間と労力を要します。ユーザーのレコードと属性を一元管理することで、反復的なタスクを削減できます。
一貫性のないセキュリティポリシー : 各アプリやサービスで独自のルールが設定されると、ギャップが生じます。IdP を通じて、調整された単一の標準に基づく ID データの均一な保護を保証できます。
コンプライアンスの課題 : GDPR や HIPAA などの規制では、違反に対して厳しい罰則が課せられます。IdP によって、構造化された ID ガバナンスを確立し、監査の合理化と規制標準のサポートが可能になります。
サイロ化されたユーザーデータベース : ID データが隔離されている場合、権限の管理が難しくなりますが、プロファイルの統合により可視性とコントロールが向上します。
スケーラビリティの問題 : ユーザー数やサービスが拡大すると、容量が限られたインフラストラクチャが圧倒される可能性がありますが、柔軟性の高い IdP プラットフォームはビジネスの成長に柔軟に対応します。
セキュリティの脆弱性 : 個別のログイン認証情報を持つシステムごとに潜在的なリスクが増えます。IdP はセキュリティ対策を一元化し、認証情報が分散しているシステムよりも強力な防御を提供します。
ユーザーエクスペリエンスの断片化 : 異なるログインフローのためにログインし直す必要がある場合、ユーザーに不満が生じ、生産性に影響します。IdP を介したシングルサインオンにより、アクセスが簡素化されます。
複雑な監査とレポート : 異質のログにわたってアクティビテ ィを理解するのは時間がかかる作業であり、エラーが発生しやすくなりますが、IdP によって監査を一元化することで、明確なインサイトが得られます。
ID プロバイダー (IdP) と並び、サービスプロバイダー (SP) も ID 管理プロセスにおいて非常に重要です。IdP はユーザー ID の検証と管理に重点を置いていますが、SP はユーザーが必要とするリソースやサービス、アプリケーションを提供します。これら2つの役割の違いとそれらがどのように連携するかを理解することは、安全で効率的な ID 管理システムを構築する上で不可欠です。
以下の主な領域における IdP と SP の役割を比較してみましょう。
主な機能 : IdP はユーザーを認証し、ユーザーの認証情報を管理して、ユーザーがさまざまなサービスを安全に利用できるようにする役割を担います。一方 SP は、ユーザーが使用するアプリケーションやリソースを提供しますが、ユーザーにアクセス許可を与える前に IdP によるユーザー ID の確認が必要です。
データの所有 : IdP は、ユーザープロファイル、認証情報、アクセス権などの ID データを所有します。SP は、アクティビティのログやサービスに紐づけられた特定のユーザー設定など、独自のアプリケーション内で生成された、ユーザーに関するあらゆる追加データを保存します。
セキュリティに関する責任 : IdP は ID セキュリティに対する責任を担い、認証プロセスが安全でベストプラクティスに従っていることを保証します。SP は、ユーザーのセキュアな認証を IdP に任せ、認証に対して直接的な責任を負いませんが、ユーザーの認証後、自社が所有するアプリケーションとデータの保護に対して責任を負います。
ユーザーインタラクション : ユーザーは主に SP のアプリケーションとやり取りをします。ただし、認証は IdP を通じて行われ、多くの場合、ユーザーは一度ログインするだけで、シングルサインオン (SSO) のメカニズムを通じて複数のサービスにアクセスする許可を得ることができます。これにより、さまざまなアプリケーションにわたってユーザーエクスペリエンスが簡素化されます。
標準の実装 : IdP は、SAML、OAuth、OpenID Connect をはじめとする ID 関連の標準に準拠し、コンプライアンスを遵守する SP への安全な接続を可能にします。SP はこれらの標準をサポートすることで IdP と効果的に通信し、安全でスムーズなユーザーインタラクションを維持します。
IdP の主な役割と機能について理解したところで、次は IdP が組織にもたらす主なメリットを見てみましょう。IdP を導入することによって ID 管理が簡素化され、セキュリティと効率性を向上させる新たな機会が生まれます。ID 機能を一元化されたハブに統合することで、可視性とコントロールを強化し、ユーザーによりスムーズなエクスペリエンスを提供できるようになります。以下は IdP がもたらす主なメリットです。
1. セキュリティの強化 : 強力な認証プロトコルと認証情報管理の統合により、防御機能を集結して脅威に対する防御力を高められます。また、一貫した保護ポリシーが均一に適用されることで ID データの安全性も強化されます。
2. ユーザーエクスペリエンスの向上 : シングルサインオンにより、余計なログインの必要性がなくなり、スムーズなアプリケーション間の移行が可能になります。
3. 管理に必要なオーバーヘッドの削減 : プロファイルの同期化により、手動によるユーザーデータのプロビジョニングと更新を自動化できます。簡素化された承認ワークフローは、アクセスリクエストの処理にも役立ちます。
4. 生産性の向上 : スムーズなアクセス許可とプロビジョニングの合理化により、社員はログインに費やす時間を減らし、より有意義な仕事に時間を費やすことができます。
5. コンプライアンスの確保 : 一元化された監査とレポート機能により、ガバナンスとデータプライバシー規制へのコンプライアンスを簡単にドキュメント化できます。
6. スケーラビリティの強化 : IdP プラットフォームは迅速に ID サービスを拡張し、増加するユーザー数と新しいアプリケーションに対応します。
7. コストの削減 : IdP が処理するタスクが増えるのに伴い、ヘルプデスクのチケット対応にかかるコストや、手動による ID プロセスのコストが経時的に減少します。
8. より迅速なオンボーディングの実現 : プロファイルの事前入力とアクセスプロビジョニングの自動化により、新規ユーザーや契約者が迅速にプロビジョニングされます。
9. 可視性の向上 : 拡張されたエコシステム全体で、どのユーザーがどのアプリケーションやリソースを利用しているのかを、一か所で確認できます。
10. 柔軟性の強化 : IdP は複数のプロトコルをサポートし、変化するニーズに対応できる適応性の高いフレームワークを備えているため、将来を見据えたテクノロジーの選択肢を提供します。
IdP は ID 機能を一元化することで、セキュリティとコンプライアンスを強化しながら、さまざまな環境にわたってサービスへのアクセスを容易にします。このアプローチにより、ユーザーエクスペリエンスの向上、オーバーヘッドの削減、可視性の強化を実現し、ID の管理方法を変革できます。
Fastly は主要な IdP と統合して保護を強化し、ログインプロセスを簡素化します。Fastly のソリューションによって、一元化されたハブ内で ID 管理を統合し、高いレベルのセキュリティとコンプライアンスを維持できます。ユーザーは IdP を通じて一度ログインすると、その後は Fastly が認証トークンを管理するため、繰り返しログインすることなく複数のサービスを使用できるようになります。以下は、Fastly のソリューションがもたらす主なメリットの詳細です。
認証の一元化 : Fastly の使用により、ID プロバイダーがシングルサインオン ポイントとして機能し、多数のパスワードを使用する煩わしさを軽減しながら全体的な保護を強化できます。
トークンベースのアクセス : Fastly のソリューションは、ID プロバイダーが発行するトークンを使用し、認証ステップを繰り返すことなくユーザーに複数サービスへのアクセスを迅速に許可し、ユーザーエクスペリエンスを合理化します。
コンプライアンスのサポート : IdP との統合により、環境全体でセキュリティルールを一貫して適用し、関連する規制への準拠の証明を簡素化できます。
API セキュリティの強化 : Fastly は、認証されたユーザーのみが機密性の高い情報や機能にアクセスできるようにすることで、アプリケーション・プログラミング・インターフェイス (API) を保護します。
ID 管理の フェデレーション : Fastly のプラットフォームは、単一の ID で複数のドメインまたはサービスへのアクセスを許可し、さまざまなシステム間のナビゲーションを簡素化します。
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