ボットはいたるところに存在します。
ボットは、今日のインターネットの大部分で目に見えない原動力として機能し、世界中のユーザーが (良い意味でも悪い意味でも) その影響を感じています。Google など人気の高い検索エンジンに欠かせないクローラーから、機密情報を求めてアカウントへのアクセスを試みるクレデンシャル・スタッフィング・ボットまで、Web トラフィック全体の40%以上をボットが占めています。ここでは、ボットとは何か、ボットの仕組み、今後のボットの方向性など、ボットについて詳しくご紹介します。
ボットは「ロボット」または「インターネットロボット」などの略で、自動化されたタスクをインターネット上で実行するソフトウェアプログラムです。データを収集するために自動的に Webサイトをクロールしたり、チャットインターフェイスを通じてユーザーとやり取りをしたり、フォームに記入したり、反復的なタスクを遂行したりするようにプログラムできます。通常、ボットは人間ができるタスクを遂行しますが、人間よりも大規模なスケールで、より効率的かつ機能的にタスクを処理し、しかも作業が正確なので、広く普及しています。
以前は、ボットの構築に必要な開発スキルを持つ人のみがボットを利用することができました。しかし現在は、正規の組織やマーケットプレイス、あるいは個人や組織が目的を達成するのをサポートするダークウェブなどで、簡単にボットを購入できます。つまり技術的なノウハウやお金さえあれば、誰でもボットを使って正当または悪意のあるアクションを実行できるのです。以下は典型的なボットの例です。
インターネット上で Web ページを発見し、クローリングしてインデックス化するために検索エンジンが使用する Web クローラー。
さまざまなプラットフォームで盗んだログイン情報を使用してユーザーアカウントへの不正アクセスを試みるプロセスを自動化するアカウントスクレイパーボット。
広告収入を意図的につり上げたり、競合企業の広告キャンペーンを妨害したりする目的で、オンライン広告のクリックを促すクリック詐欺ボット。
ボットには多くの種類が存在します。詳しくはこちらをご覧ください。
ボットに対する理解を深める上で、ボットが「正当なボット」または「悪意のあるボット」に分類されることがよくある点に注目する必要があります。両方とも機能的には同じですが、正当なボットは合法および倫理にかなったタスクを遂行することを目的とし、日常的に使用されています。Google をはじめとするほぼすべての検索エンジンがクローラーボットを利用して最良の検索結果を特定し、ユーザーに提供しています。また Alexa や Siri などのアシスタントツールは、ユーザーがさまざまなタスクを遂行するのをサポートするチャットボットの良い例です。コンテンツを別の言語で読むために翻訳ボットを活用したり、株式市場で株価の推移を確認するためにファイナンスボットを利用したりするなど、大勢の人が日々の生活の中でボットを使用し、ボットは現代生活の原動力になっているともいえます。
一方、悪意のあるボット (「悪質なボット」と言われることもあります) には、違法なサイバー犯罪に加担しているボットだけでなく、アプリケーションのサービス利用規約や robots.txt の動作ルールに従わないボットも含まれます。後者は本質的に違法ではありませんが、このように非倫理的なアクションはサイト所有者の意図に反するため、これらも「悪意のあるボット」に分類されます。悪意のあるボットは Web トラフィックの非常に大きな割合を占めています。例えば2020年の第三四半期だけを見ても、13億件を超える攻撃が悪意のあるボットによって実行されています。これは、1日あたり1,500万件以上の攻撃に相当します。
悪意のあるボットの究極の目的は、攻撃を仕掛けるハッカーの利益のために、組織または個人に被害をもたらすことにあります。悪意のあるボットには多くの種類がありますが、多くが機密性の高い情報へのアクセスや、組織の正常なオペレーションを妨害するために使用されます。
例えば悪意のあるボットは、氏名やマイナンバー、クレジットカード番号、ユーザーネーム、パスワードなど、個人を特定できる情報 (PII) を盗むことができます。ユーザーがコンピューターでアクセスする機密情報は、ハッカーによって狙われる可能性があるということです。ハッカーは盗んだ情報を使用して不正な購入やプライベートアカウントへのアクセスを試みたり、ダークウェブでその情報を売ったりすることもあります。試しに haveIbeenpwned.com に、任意のパスワードを入力してみてください。この人気サイトでは、ダークウェブで売買されているリストに入力されたパスワードが含まれているかどうかを確認できます。
また、悪意のあるボットによって通常のビジネスの流れが妨害されることもあります。一般的にこのような攻撃は、悪名を得るため、あるいは組織の機能を麻痺させる目的でハッカーによって仕掛けられ、売り上げの喪失や市場での評判の下落につながりかねません。
さらにハクティビストによって、政府組織や自分たちの主義に反する経営方針を掲げる企業に対して悪意のあるボットが仕掛けられることもあります。例えばロシアとウクライナの戦争では、ベラルーシの反ロシア派ハクティビスト集団が鉄道システムにボット攻撃を仕掛け、運用不能にしたことで、ロシア軍の進行がスローダウンしました。Anonymous のようなハッカー集団もよくこの種類に属します。
攻撃の目的には際限がなく、ここに挙げたのは、攻撃者が目的を達成する手段としてボットを利用するほんの一例です。現在利用されている最も一般的なボットの種類については、悪意のあるボットの種類に関するこちらのページをご覧ください。