2つのグラフから分かるマルチ CDN 導入の重要性
コンテンツ配信ネットワーク (CDN) がメディアで取り上げられるとき、システム障害への注目が大半を占めます。しかしこれは、企業が複数の CDN を導入する主な理由ではありません。NPAW の「Navigating CDN Strategies」レポートによると、システム障害は上位5つの導入理由にも入っていません。
マルチ CDN アーキテクチャへの移行の最も一般的な理由として、ストリーミングコストの削減、ユーザー体感品質 (QoE) の向上、ローカルネットワークの帯域問題に対処できる適応性の高いインフラの構築が挙げられます。
大手コンテンツ企業やコンテンツ配信企業の多くがすでにマルチ CDN を導入している一方で、多くの中小企業やスタートアップ企業をはじめとするクラウド系企業は、依然として複数の CDN の利用を前提とした配信戦略に移行していません。そのような企業や、最近プロバイダーを変更してより機能的なマルチ CDN アーキテクチャの構築を目指している企業には、マルチ CDN の導入を検討する上で重要となる要素を示す以下の2つのグラフが参考になるでしょう。
1. 大半の企業がマルチ CDN を導入
複数の CDN の利用は現在、ストリーミング業界におけるベストプラクティスとなっています。お客様がまだ2つ以上の CDN を導入していない場合、マルチ CDN を採用することで、コスト削減、エンドユーザーエクスペリエンスの改善、さまざまなローカルネットワークの状況に適応する能力の強化といったメリットの享受が見込めます。
このグラフは2つの異なる調査の結果に基づいており、ここからマルチ CDN の導入におけるトレンドの変化を読み取ることができます。マルチ CDN の採用状況について毎年のデータをまとめたレポートは存在しないようです。それでも、異なる2つの調査の結果を比較すると、2015年の調査では、マルチ CDN をすでに利用している、または導入を予定している企業の割合は43%でしたが、2020年にはこの比率が75%まで上昇しています。2020年の調査では、47%の企業がすでにマルチ CDN を実装済み、28%の企業が近いうちにマルチ CDN の導入を予定していると回答しています。
マルチ CDN 戦略の急速な普及は、適応性と信頼性の高いインフラを速やかに構築することが重要であることを示しています。
2. 適切なマルチ CDN の構築におけるハードル
プライベート CDN とサードパーティ CDN を組み合わせたハイブリッドなマルチ CDN インフラを構築している企業の比率は、わずか21%です。その理由は明白です。CDN 自体がすでに複雑であり、組み合わせることでさらに複雑性が増すためです。設定を一歩でも間違えると、顧客離れなどの重大な影響をビジネスに及ぼしかねません。とはいえ、どのような CDN であっても、時にはインフラ内で障害が起こることがあります。インターネットの接続状況による問題を回避するためにも、複数の CDN を導入する必要性が高まっています。
ただし、社内で適切に独自の CDN を構築するのは容易ではありません。58%以上の企業が技術的な複雑さを理由に自社での CDN 開発を断念しています。また、約半数の企業がコストを理由に自前の CDN を使用していません。
しかも、設定を誤るとビジネスにも影響を及ぼします。成功しているストリーミングメディアサービスやクラウドアプリケーションの重要な特徴は、優れたユーザー体感品質 (QoE) です。ストリーミングサービスを今後も利用するかどうかの判断材料として、ユーザーの半数が QoE を挙げています。高いビットレートと低レイテンシはマルチ CDN の強みであり、レベルの高い QoE を実現するために欠かせない要素です。
次のステップ : より優れたマルチ CDN 環境の実現
単に複数の CDN を使ってコンテンツを配信するだけでは不十分です。真に効果的なマルチ CDN 環境を実現するには、コンテンツごとに最も費用対効果の高いルーティングを選択し、コストまたは帯域の状況に基づいてリアルタイムでトラフィックを切り替えることができ、エンドユーザーのデバイスや場所に応じたトラフィックのカスタマイズが可能で、複数の CDN を包括的かつリアルタイムで可視化する機能を備えたシステムの構築が必要です。
例えば、Fastly のメディアシールドを使えばコンテンツプロバイダーは複数のコンテンツ配信ネットワークを効果的に利用できます。これによって、信頼性の高いコンテンツ配信ときめ細かなコントロールを実現できます。この機能により、ビデオオンデマンドサービスとライブコンテンツのパブリッシャーは、複数の CDN を利用したルーティングのシフト、ネットワーク使用の最適化、トラフィック要件の緩和といったメリットが得られます。さらに、同じコンテンツに対する複数のリクエストをひとつにまとめてエッジから直接配信できるリクエスト共有などの機能を利用して、コストを抑えながらネットワークの効率をさらに高めることが可能になります。
低レイテンシ配信、コスト削減、より効率的なルーティング、冗長性といったメリットが評価され、今やマルチ CDN は、コンテンツのストリーミングやクラウドアプリケーションの最新インフラにおいて欠かせないものとなっています。
ユーザーエクスペリエンスを向上させる方法について、詳しくは最新のマルチ CDN に関するソリューションブリーフをご覧ください。