Fastly でのプロダクト設計 : 優れたエンタープライズ・エクスペリエンスを生み出す方法
Fastly では、お客様のニーズに深く目を向けることで、快適なエンタープライズ・エクスペリエンスを実現すべく設計しています。業界屈指のエッジクラウドプラットフォームとして大規模な設計を成功させることは、消費者サイト向けの設計とは著しく異なるように感じる人も多いと思います。ただし、ヒューマンセントリックなエクスペリエンスの創出を目指している場合は、設計上の重要な課題の大半は共通しています。
私は消費者向けインターフェイスの作成に20年間携わった後、エンタープライズ設計、つまり企業のお客様向けのエクスペリエンスを生み出す仕事に関わり始めました。仕事の内容が変わった当初は戸惑いましたが、その過程において、B2C 設計と B2B 設計の間には注目すべき類似点と、良い意味での大きな相違点があることに気付きました。
このブログ記事では、エンタープライズプロダクト設計のリーダーになる過程で私が得た気付きについてお話しします。
お客様のニーズの発見
エンタープライズソフトウェアの設計の素晴らしいことのひとつは、社内の多くの人々がエンドユーザーのことを本当に良く理解しているということです。Fastly では、セールス部門、経営幹部層、プロダクト部門がお客様と常にお会いし、私たちのプロダクトの改善に関するリクエストを聞き集めています。
消費者向け企業の場合は、実際にお客様とお話しするのが UX 担当者とサポート担当者のみということもあるので、同じことができるとは限りません。消費者がサポート担当者に連絡するのは、配送品の紛失や損傷など品物の損失に関する苦情を伝える場合がほとんどで、プロダクトの改善をリクエストすることはあまりありません。一方エンタープライズエンタープライズソフトウェアのお客様は、サポートを求めることや、日々のニーズを解決する助けとなる新機能をリクエストすることに慣れています。エンタープライズサポート企業は、お客様のニーズを理解するために設計者として利用できるお客様の意見の宝庫です。
ある機能の発表が近づくと、私たちは、プロダクトを出荷する前に社内ユーザーとともに何度もテストを実施します。まずはプロダクトをベータ版 (Beta) としてリリースします。これにより、お客様のフィードバックを得た上で、必要なソリューションを何度も検討する機会を得られます。Fastly のプロダクトはベータ版 (Beta)、限定提供版、一般公開版 (General Availability) の各フェーズを経ます。つまり、お客様の意見を収集し、ソリューションを改善する機会が数多くあります。詳しくはプロダクトのライフサイクルをご確認ください。
大規模な設計
エンタープライズ設計では、一般的な消費者向け Web アプリケーションで見られるものと同じ構成要素が数多く使用されます。私たちは設計者として、消費者インターフェイス上で日々目にするものと同じフォームコントロールやボタン、さらにはビジュアルパターンを採用します。たとえば、アカウントメニューは通常、消費者向けのコントロールパネル上と同じ位置にあります。具体的には、B2B インターフェイスの場合、アカウントメニューは画面の右上隅にあります。同様に大半のコントロールパネルは、上部または側部ナビゲーションを組み込む共通のテンプレートに従っています。すなわち、モバイル用のハンバーガーメニューやフッター要素などです。多くのインターフェイスは標準的な構成で統一されていますが、エンタープライズプロダクトの場合は、消費者エクスペリエンスでは不要または実用的でない複雑性を検討しないといけないケースもあります。
エンタープライズ UI は多くの場合、顧客のニーズを満たすためにより多くのコントロールに対応しなければならないため、過度に煩雑になることを避けるため大胆にスケール変更する必要があります。消費者設計では通常、セールスファネル内で顧客をふるいにかけることを目的として、邪魔なものをすべて取り去るべく懸命に努力します。しかし、B2B 設計では、実際的な知識を備えたユーザー向けに、あらゆる用途に対応したオプションを組み込む必要があります。こうしたオプションを、デザイン性が高いだけでなくユーザーが使いやすいかたちでインターフェイスに統合できるよう、私たちは設計者として多くの時間を費やしてさまざまな設計ソリューションを何度も試しています。
設計のタイムライン
お客様に提供する最終的なユーザーインターフェイスは、多くのプロダクト設計者がエクスペリエンスを生み出すために使用する成熟したプロセスにおけるひとつのフェーズにすぎません。インターフェイスの開発は、ダブルダイアモンド設計プロセスと呼ばれる手法の最後に行われることが一般的です。この手法は、設計プロセス全体に調査や顧客フィードバック、イテレーションが含まれることを保証するために実施されます。プロジェクトによっては、エンタープライズ設計におけるダブルダイアモンドプロセスのステージが、より広範かつ入念になる場合もあります。
消費者向け設計と基本的なプロセスが同じだとして、エンタープライズ設計ではこの手法が広範に使用されるのはなぜでしょうか? このプロセスは実際の消費者向けの設計では、大幅に切り詰められる場合が数多くあります。カスタマーエクスペリエンスの多くは、数週間またはわずか1か月以内に考案、設計され、全面的に市場に投入されます。このペースで設計する際に、多くの要素が切り捨てられるのです。設計期間がわずか1週間しかないような場合、設計者が各設計フェーズにかけられる時間はわずかで、各工程にざっと目を通す程度のときもあります。しかしこうした慌ただしいタイムラインでは、入念に調査して多くの発見や気付きを得ることは困難です。Fastly のプロダクトライフサイクルは、お客様のニーズを発見し、調査を総合し、設計し、ソリューションを反復するためにより多くの時間とプロセスが確保されるよう設計されています。
報酬要因
ヒューマンセントリックな UX 設計は私たちにとって重要であり、お客様のフィードバックはそのプロセスの重要な構成要素です。私たちは、どの機能がお客様の業務を容易にしているか、あるいはより困難にしているかといったお話を、お客様から直接伺える機会を大切にしています。プロダクト設計者は人間であるため、物事がいつも最初からうまくいくとは限りません。何が効果的か、あるいはそうでないかを理解するには、お客様のフィードバックが重要です。なにより、そうしたフィードバックを聞くことで、自分が誰かの日々の生活を劇的に変える役割を果たしたのを知ることができます。これ以上にうれしいことはありません。そうした瞬間が、私たちの仕事のモチベーションになるのです。
Fastly を使用したエクスペリエンスに関するフィードバックがありましたら、ぜひ私たちにお聞かせください (support@fastly. com)。