PayPal : 安全で信頼性の高いデジタル決済をエッジで実現
3億人ものユーザーを抱える決済システム大手の PayPal にとって、セキュリティや最適なパフォーマンス、スケーラビリティは欠かすことのできない要素です。PayPal のソフトウェアエンジニア Arijit Ghosh 氏曰く、PayPal がエッジエンジニアリングを検討し始めた理由もそこにあります。同社はエッジでのイノベーションを活用することで、競争の激しい市場で優位性を保ち、ダイナミックなユーザーエクスペリエンスを大規模に展開しています。
エッジの可能性
PayPal には、ファイナンスサービスを民主化し、人々や企業がグローバル経済に参加して繁栄する一助となる、という非常に野心的なビジョンがあります。これを効果的に実践するには、以下の2点に焦点を当てる必要があります。
セキュリティ : 金融機関は「信頼のビジネス」
高速かつ信頼性の高いユーザーエクスペリエンス : 誰でも簡単に利用できるデジタル決済
エッジクラウドプラットフォームでは、この2つをより効果的に実現することが可能です。これこそ、PayPal が Fastly のプラットフォームに興味を持った第一の理由でした。Arijit 氏は、2020年のカスタマーカンファレンス Altitude で「エッジソリューションは現在において必要なテクノロジーだが、未来では必要不可欠なものになる」と語っています。
必要不可欠なセキュリティ
当然のことですが、PayPal は常にセキュリティを重視してきました。そのため、同社のエンジニアリングチームがエッジの導入を開始した際に最大の課題となったのは、最高レベルのリスク対策とセキュリティコントロールの確保でした。
Web サイトのスパイ行為や DDoS 攻撃、エクスプロイトの試みは、ファイナンスサービスプロバイダーにとって日常的な脅威です。PayPal のシステムは顧客を保護するために常に堅牢でなければなりません。そのため、これまで Fastly の WAF やその他の関連するセキュリティ機能を有効にし、既存のセキュリティ対策を強化してきました。
これらの機能の中で PayPal が特に気に入っているのは、リアルタイムの可視化であると Arijit 氏は指摘します。スマートなアラートシステムにより、チームは脅威の発生と同時に脅威を特定し、迅速に対応・分析を行い、リスクやサービスへの影響を最小限に抑えることができます。
世界のどこでも、より迅速で信頼できるエクスペリエンス
PayPal のようにグローバルに事業展開をしている場合、データが長い距離を往復をしなければならないことも多く、レイテンシが大きな問題になります。ユーザーエクスペリエンスが事業に大きな影響をもたらすリピートビジネスにとって、1ミリ秒が貴重です。
PayPal のオリジンサーバーと Fastly のシールド POP をオリジンコネクトでダイレクトにファイバー接続することで、PayPal のデータを処理する組織の数 (つまりサーバーの数) を減らすことができます。これによりホップ数が削減され、レイテンシが効果的に短縮されるだけでなく、ネットワークの可用性を高め、より速いレスポンスタイムを実現しています。
Fastly のスマートネットワークは、PayPal が他のさまざまなインターネット環境の問題を回避するのにも役立っています。インターネットは広大で、障害が発生しやすいものです。接続性が断続的に失われる中で信頼性の高いサービスの運用を維持することは大きな課題ですが、PayPal ではリアルタイムのインサイトとコントロールを活用してこの問題による影響を抑えています。
PayPal はリアルタイムログを通じてサービスを可視化し、対象となるサービス、ユーザーのニーズ、その日のインターネットのパフォーマンスに基づき、設定を柔軟に微調整することができます。PayPal のエンジニアは、カスタマイズされたリアルタイムのダッシュボードで Fastly のログを活用し、レイテンシが最も発生しているルートを特定することで、設定の変更やシールドの選択を効果的に行い、常に最速かつ最も信頼性の高いユーザーエクスペリエンスを提供することができます。
デジタルビジネスでは通常、最初の1バイトが到着するまでの時間やページの読み込み時間など、ネットワークの具体的なメトリクスによってエンドユーザーのエクスペリエンスの質が測られることが多いのですが、今日ではこれらのメトリクスはパフォーマンスの問題やボトルネックを特定するのにより適していると Arijit 氏は考えます。同氏はまた、エンドユーザーのエクスペリエンスを正確に把握するには、このようなリアルタイムのネットワークモニタリングが必要であると語っています。リアルタイムに近い可視性を得ることで、PayPal はプログラムで効果的にトラフィックを誘導し、クラスターを設定して高可用性とダウンタイムの最小化を実現しています。
未来への前進
PayPal チームはエッジテクノロジーが同社の今後の成長の鍵を握っていると考えていると Arijit 氏は言います。2020年はまさに変化のスピードの速さを実感した一年でした。消費者の行動やテクノロジーの活用方法は、一夜にして変化する可能性があります。このような不確実性の中で、PayPal は信頼性の高い決済システムを消費者や企業に提供し続けることができるよう、たゆまぬ努力を続けています。
「テクノロジーは変化し、ツールも変化します。今後も新たな課題に直面することと思いますが、Fastly との関わりの中で私たちが最も尊重しているのは、共に働く仲間たちです」と Arijit 氏は語ります。「彼らは素晴らしいパートナーであり、まさに私たちのチームの一部も同然です。共に喜んで作業し、力を合わせて遭遇する問題を迅速に解決し、成功も失敗も共に分かちあえる存在です」
このブログ記事は、2020年11月に開催された Altitude のカスタマーサミットにて行われた講演を元に作成しました。Fastly とインターネットの未来に関するバーチャルイベントでのその他の講演はこちらからご覧いただけます。