Wasm の未来を示す Fastly チームによる6つのトークセッション
4年前、私たちは WebAssembly に大きな賭けをしました (Fastly は Bytecode Alliance の創設メンバーとして理事会に参加し、Wasm のエコシステムへの貢献者数名をフルタイムまたはパートタイムで採用しています)。賭けを実行したのは、WebAssembly が約束する可能性が Web とその基盤インフラストラクチャにとって何を意味するかを、私たちはすでにその頃から理解していたからです。Fastly のサーバーレス・エッジ・コンピューティング環境「Fastly Compute」が WebAssembly をベースにしている理由がここにあります。Wasm で実現可能な未来を考えると、私たちはこの上なくワクワクします。そこでこの記事では、Wasm の未来を皆さまと共有するために6つのトークセッションをお届けします。
2023年9月、Fastly チームは WasmCon に参加しました。その際、生成 AI から WebAssembly で機械学習モデルを実行する方法や Wasm における安全性と正当性を保証する方法まで、幅広いトピックに関するトークセッションを行いました。Wasm の未来についての私たちのビジョンを皆さまにご紹介し、Wasm のエコシステムに Fastly が大きく力を入れている理由をご理解いただけるよう、これらのセッションの動画を以下でご紹介します。本当に優れたインターネットの構築に必要なパフォーマンスやアジリティの向上、セキュリティやプライバシーの強化を実現するには、WebAssembly のようなオープンソースソフトウェアへの投資と利用が欠かせないと私たちは確信しています。その証拠をご覧ください。
WasmCon 2023 での Fastly によるトークセッション
**コンポーネントとは何か (なぜ重要か)?
**Luke Wagner、Fastly、Distinguished Engineer
WebAssembly Component Model は、アプリケーションやライブラリ内でモジュールが構成される方法を定義することで、中心となる WebAssembly のスタンダードをベースに構築することを提案するものです。このモデルは、大規模にソフトウェアを開発、デプロイ、概念化する方法を大きく改革することを目的としています。このセッションでは、コンポーネントの定義、他の馴染みのあるコンセプトとの関係性、コンポーネントがもたらす新たな機能により将来的に実現が可能になることについてご説明します。
**Fastly Compute における機械学習
**Andrew Brown 氏、Intel、Software Engineer および Matthew Tamayo-Rios、Fastly、Staff Software Engineer
深層学習の分野における最近の進歩を見ると、この技術によって私たちの生活の仕方や学習方法、働き方が大きく変化することが予想されます。このセッションでは、wasi-nn を使用して WebAssmebly モジュールで機械学習モデル (ML) を効率的に実行できるようにする方法を探ります。また、Fastly の Compute 環境でこれをうまく機能させるために何が必要かについてもご説明します。ステートレス FaaS 環境で効率的に実行できるよう、wasi-nn 仕様を拡張して各リクエストごとにモデルを再読み込みするのを回避し、ホスト API を変更して Wasmtime のイベントループとの干渉を避け、セキュリティ関連のトレードオフの一部を解消し、KServe プロトコルに基づいて新しいプロキシバックエンドを導入しました。OpenVINO、ONNX、Pythorch を使用して分類と生成 AI のワークフローを実行する Compute サービスのデモを通じて、この機能に関するあらゆる側面を解説します。
**WebAssembly コンポーネント向けの JavaScript ツールチェーン
**Guy Bedford、Fastly、WebAssembly、Principal Software Engineer
このプレゼンテーションでは、WebAssembly コンポーネント向けの JavaScript ツールチェーンプロジェクトをご紹介します。JavaScript 環境での WebAssembly コンポーネントの実行においてサポートされているコンポーネントモデルの最新機能や、JavaScript での WebAssembly コンポーネントの記述について解説します。また、ファイルシステムアクセスなどのプラットフォームプリミティブがブラウザなど異なる環境でサポートされる方法を実演し、仮想化のワークフローもご紹介します。
**熱い注目を浴びるふたつのテクノロジーが織りなす優れたパワーをご紹介 : WebAssemly と 生成 AI
**Larry Carvalho 氏、RobustCloud、Principal Consultant; Radu Matei 氏、Fermyon、共同創設者兼 Chief Technology Officer; Aparna Sinha 氏、PearVC、Head Enterprise AI/ML; Tyler McMullen、Fastly、共同創設者兼 CTO
WebAssembly (Wasm) と生成 AI (GAI) は、どちらもビジネスに変革をもたらす可能性を秘めていることから、非常に大きな注目を集めている新しいテクノロジーです。いずれもコンピューティング方法に変化をもたらし、大規模なイノベーションの実現に貢献することが期待されています。GAI は自動化によって世界経済に変革をもたらし、知識労働者からソフトウェア開発者まで、さまざまな部門の仕事に影響します。Wasm は、より高速で効率性と移植性が高い Web アプリケーションの構築を可能にし、ユーザーエクスペリエンスと全体的な生産性を向上させることで、ビジネスを強化できます。このパネルセッションでは、このふたつのテクノロジーが互いに補完し合う可能性について検討します。ユースケースや期待できる初期のイノベーション、今後の展望などについてディスカッションします。RobustCloud の Principal Consultant である Larry Carvalho 氏が業界をリードする次のパネリストを迎え、このセッションの司会を務めます。1. Radu Matei 氏、Fermyon Technologies、共同創設者兼 CTO。 2. Tyler McMullen、Fastly、CTO。3. Aparna Sinha 氏、Pear VC、VC/Entrepreneur。
**WASI OS - 通信しながら隔離、Wasm スタイル
**Dan Gohman、Fastly、Wasm 担当
OS の設計における典型的な課題のひとつに、プログラムを互いに切り離す必要性と、プログラムを互いに接続させる必要性を組み合わせることがあります。このセッションでは OS 設計の視点から WASI を考察し、Wasm インスタンスおよびその通信機能と、従来の OS プロセスおよびプロセス間通信 (IPC) の類似点と相違点を検討します。さらに WASI-http と WASI-sockets API について詳しく解説し、この理論が実際にどのように役立つかを確認します。
**Wasmtime における安全性と正当性
**Nick Fitzgerald、Bytecode Alliance、Technical Steering Committee Chair
WebAssembly プログラムはサンドボックス化され、それぞれ他のプログラムやホストから隔離されているので、メモリの外部領域の読み込みや書き込み、プロセスにおける任意のコードへのコントロールの移行、ネットワークやファイルシステムへの自由なアクセスは不可能です。これにより、信頼できない WebAssembly プログラムを安全に実行できます。サンドボックスを回避してパソコンの他の場所から個人情報を盗んだり、サーバー上でボットネットを実行したりすることはできません。ただし、このようなセキュリティ属性は、WebAssembly ランタイムの実装が正しくないと維持されません。このセッションでは、WebAssembly のランタイム Wasmtime とそのコンパイラ Cranelift において、私たちが正当性を確保している方法をご紹介します。
より優れた Web の実現に向けた取り組み
開発者がイノベーションを継続し、最高のオンラインエクスペリエンスを提供し続けるには、Fastly のエッジのようにセキュアな環境で安全かつ簡単にアプリケーションを構築することを可能にするテクノロジーを利用できる必要があります。すべてのユーザーのためにインターネットの安全性とパフォーマンスを強化するうえで、オープンソースと業界間のコラボレーションへの投資が不可欠です。Fastly は、さまざまな組織が共通の基盤の下に集う相互運用可能なソフトウェアコミュニティの形成を可能にする、ミッションクリティカルなテクノロジーとして WebAssembly の発展に力を注いでいます。
WebAssembly を実際に試してみたい方は、こちらのスタートガイドをご覧ください!