10年以上にわたるスーパーボウルの配信サポートで新たな記録を更新
2023年は、スーパーボウルのプロジェクトに Fastly が関わりはじめて11年目になります。2013年の頃は、大会開催中のオンラインビジネス広告向けに専用の帯域を提供していました。しかし2018年以降は、放送事業者がスーパーボウルを世界中にいる何百万人ものオンライン視聴者に向けてライブストリームするためのサポートを積極的に行っています。
メディア & エンターテイメント業界がオンラインストリーミングの躍進に注目
2017年から2021年にかけて、スーパーボウルの視聴者数が米国では1億1400万人から9100万人へと大幅に減少しました (参照)。しかし翌年2022年には視聴者数が9900万人まで回復したことから、2023年にはその数はさらに増加することが予想されました (参照)。今年のカンファレンスチャンピオンシップの平均視聴者数は5000万人で、昨年比で約3%増加しています。こうした傾向から、業界の専門家たちの間では (参照)、2023年のスーパーボウルの視聴者数は1億人を超えると言われていました。
私たちも、オンラインストリーミングで視聴するオンライン視聴者の数が、今年は昨年以上に高い伸び率で増加すると考えていました。下図が示す通り、2022年の伸びは例年と比べて鈍化しています。この理由としては、ここ数年ひとりあるいは少人数で視聴していたスーパーボウルを、昨年は以前のように大勢で観戦を楽しんだ人々が増えたという視聴スタイルの変化が背景にある可能性が考えられます。
2023年 Fastly ネットワークのトラフィックパターン
Fastly のグローバルネットワークでは、2023年のスーパーボウルで 81.9 Tbps という記録的な高トラフィックが観測されました。そのうちの 73.2 Tbps は北米で配信され、それ自体も記録的な数字です。
下図は、Fastly が配信した2023年スーパーボウルのトラフィックを示しています。コマーシャルは Fastly とは別のインフラで配信されていたことから、広告放送時のトラフィックはギザギザの線になっており、数字も大きく下降しています。
予想していた通り、試合の開始時間が近づくと、他の放送事業者でトラフィックが減少する傾向がみられました。さらにハーフタイムショーの間は、例年と同様にソーシャルメディアのトラフィックが大幅に減少しています。ただし、リアーナの妊娠の可能性で盛り上がっていた SNS が例外的にありました (参照)。
後半戦で35対35の同点になるなど、最後まで目の離せない展開になり、試合終了時には2番目に高いトラフィックピークを記録しました。
やり直しがきかないスポーツイベントのライブ配信
米国のケーブルテレビ加入者が一時期と比べて2500万人減少しており、2025年までに契約者数がさらに2500万人減少すると予想されています (参照)。今日のライブイベントの中継は、オンライン配信へと急速に移行しています。しかし、スポーツの生中継のネット配信は容易ではなく、さまざまなリスクが伴います。「やり直す」という選択肢がないので、企業は、ファン離れや今後の契約交渉が難化するなど、甚大な損害を被る可能性があるのです。配信時のトラブルに備えて、通常は複数のベンダーを利用し、予行演習と準備が配信を成功させる鍵となります。2022年の Streaming Summit に参加していたある放送事業関係者が、スーパーボウルの企画には開催の18か月前から取り組んでいると発言していたのは、まさにその好例です。
今年も Fastly は、オンライン放送事業者やアグリゲーターが、世界中にいる大勢のファンと彼らのデバイスに高解像度のストリームを配信するのをサポートしています。233 Tbps の容量を誇る Fastly のグローバルネットワークを利用することで、オンライン放送事業者は、あらゆる規模のオンライン視聴者に向けて遅延なしの配信を実現できます。マルチ CDN 環境でのスポーツのライブ配信に広く利用されている Fastly メディアシールドは、オリジンへのリクエストをまとめて処理するため、コンテンツ配信業者はマルチ CDN の導入で失ったインサイトを取り戻すことが可能になります。
また、Fastly の実用的なインサイトデータをリアルタイムで活用できるので、オンライン放送事業者はインターネット環境の問題やボトルネックの発生時に独自の視点で問題を把握し、放送事故がニュースになるような事態を未然に防ぐことができます。
eコマースへの影響
例年言及している通り、スーパーボウル向けコマーシャルの先行公開は、オンライン販売サイトへのトラフィックパターンに大きな影響を及ぼしています。試合開催中、これらのサイトへのトラフィックは増加していますが、先行公開時のトラフィック増加の方が大きく、試合中のトラフィックピークはそれよりも少ない傾向がみられます。観戦者にとってコマーシャルは退屈かもしれませんし、(先行公開によって) サプライズ的な要素も少なくなります。しかし2023年のスーパーボウルの広告費用は、30秒のスポット CM で1,000万ドル近くに達することを考えると、広告視聴者数の最大化を目指してできる限りのことを行う必要性も理解できます。
最後に
スーパーボウルファンの大半は、現在も従来的な方法で試合を観戦しています。今後ケーブルネットワークの加入者がさらに2500万人減少したとしても、ケーブルテレビとオンライン配信の差は依然として大きいのです。Fastly にとって、世界最大規模の素晴らしい放送事業者のオンラインコンテンツ配信をサポートできることは大変な名誉です。特に、FOX Sports のライブストリーミングイベントが今回も大きな成功を収めたことを嬉しく思います。
FOX Sports がスーパーボウルとその準備作業について語っているウェビナーは、こちらからご覧いただけます。